OXYGENのリアルタイム電力解析
近年、電気システムはますます高速かつ複雑に動作するようになっています。
電動ドライブ、インバータシステム、パワーエレクトロニクスの試験では、電力データをほぼリアルタイムに確認しながら評価を進めることが求められています。
特に制御・自動化環境では、わずかな遅延であっても、試験結果や制御応答に大きな影響を与えることがあります。
こうした課題に対応するため、OXYGENには新たにリアルタイム電力演算(Real-Time Power Calculation)が搭載されました。
この新機能により、超低遅延で高速な電力解析を実現します。
OXYGENのリアルタイム電力演算とは?
OXYGENのPower Groupツールに追加された新しいRealtimeタブにより、既存の電力解析機能を拡張し、リアルタイムでの電力演算が可能になりました。
この機能はPower Groupツールに直接統合されており、最大1 kHzの更新レートと、標準2 msのI/O遅延で演算できます。

図1:OXYGENのPower Groupツール内のリアルタイムオプション
OXYGENのリアルタイム電力機能は、Otherを除くほぼすべての配線構成に対応しており、以下のような幅広い演算値を出力できます。
- 電圧値:RMS、平均値、ピークツーピーク
- 電流値:RMS、平均値、ピークツーピーク
- 有効電力、無効電力、皮相電力
- 力率
- リアルタイム波形データ
選択したPower Group構成に応じて、DC電力、機械的電力、効率演算などの追加値も利用できます。
設定は標準のPower Groupツール内で行えますが、リアルタイム電力演算そのものは、標準の電力解析エンジンとは独立して動作します。
演算された値はUDP通信で転送されるため、外部システムや制御アプリケーション、またはOXYGEN内での追加処理にすぐに活用できます。
Note:
この機能を使用するには、ソフトウェアオプション OXY-OPT-POWER-RT が必要です。
低遅延の電力解析が重要な理由
多くのアプリケーションでは、電力値は監視や事後解析だけでなく、制御や保護にも利用されます。
そのため、システムが電気的条件の変化にすばやく反応するには、低遅延で電力値を取得できることが重要です。
代表的な例として、以下が挙げられます。
- インバータ制御
- 電動ドライブ試験
- HIL(Hardware-in-the-Loop)システム
- 過渡現象の検出
- 高速保護機構
このような環境では、フィードバックに遅延があると、測定システムと被試験物(DUT)間の同期精度に影響する可能性があります。
リアルタイム電力演算は、この遅延を抑え、電気的条件の変化に対してシステムがよりすばやく応答できるようにします。
そのため、OXYGENのリアルタイム電力解析は、動的で時間制約の厳しいアプリケーションに特に有効です。
リアルタイム電力解析と標準の電力解析
リアルタイム電力演算は、標準の電力解析を置き換える機能のように見えるかもしれません。
しかし、実際にはそれぞれ得意とする役割が異なります。
リアルタイム電力解析は、重要な電力値を低遅延で出力することを重視しています。
高速な制御ループや、電気的条件が短時間で変化する動的システムに適しています。
一方、OXYGEN計測ソフトウェアの標準の電力解析は、詳細な解析や柔軟なデータ活用に適しています。
たとえば、以下のような機能を利用できます。
- 高調波・中間高調波解析
- スーパー高調波
- 対称成分
- フリッカ解析
- DQ解析
また、CAN、TCP/IP、XCP、OPC UAなど、幅広い通信・統合オプションにも対応しており、高度なロギングやポストプロセッシングにも対応しています。
対応するオペレーティングシステムにも違いがあります。
標準の電力解析は、OXYGENが対応するすべてのオペレーティングシステムで利用できます。
一方、リアルタイム電力演算は、決定論的なリアルタイム性能を確保するため、現時点ではUbuntu 24.04が必要です。
両者の大きな違いは遅延です。
リアルタイム電力演算は標準で約2 msの遅延で動作するのに対し、標準の電力解析では通常、約300 ms程度の遅延で動作します。
リアルタイム電力解析と標準の電力解析を併用
OXYGEN計測ソフトウェアでは、リアルタイム電力解析と標準の電力解析を同時に使用できます。
これにより、リアルタイム電力解析で高速なフィードバックや制御アプリケーションに対応しながら、標準の電力解析ツールで詳細な電力品質解析を行うことができます。
多くの最新の試験セットアップでは、この組み合わせにより、即時応答と詳細な解析の両方を活用できます。

図2:OXYGENによるリアルタイム電力測定
どちらのアプローチが適しているか?
選択のポイントは、アプリケーションで何を優先するかです。
高速な応答や低遅延フィードバックが必要な場合、また決まったタイミングで確実に処理したい場合は、リアルタイム電力解析が適しています。
一方で、詳細な電力品質解析、幅広い通信インターフェース、長期ロギング、高度なポストプロセッシングを重視する場合は、標準の電力解析が適しています。
多くのケースでは、両方を組み合わせることで、リアルタイム応答と詳細解析の両方を活用できます。
まとめ
「リアルタイム電力演算」オプションにより、OXYGENは高速な応答が求められる測定アプリケーションにも対応できるようになりました。
電力値をわずか数ミリ秒で演算・転送できるため、動的システムやクローズドループ環境での評価に活用できます。
また、OXYGENの既存の電力解析ツールでは、詳細な電力品質評価に必要な高度な解析機能を引き続き利用できます。
リアルタイム電力演算と標準の電力解析を組み合わせることで、高速なリアルタイム応答と詳細な解析を、1つのソフトウェア環境で両立できます。