OXYGEN 8.1 — リアルタイム演算とシームレスなシステム統合を実現する新機能
OXYGEN 8.1は、OXYGEN 8.xリリースシリーズにおける最初のアップデートです。
本バージョンでは、リアルタイム電力解析と、最新の試験環境への統合性向上に重点を置いています。特に、ModbusおよびOPC UA向けに、OXYGEN上で動作するサーバ機能が導入されたことが大きな特長です。
さらに、デジタルI/O機能の強化、SDKサポートの拡張、操作性向上のための各種改善と調整も含まれています。
新機能
リアルタイム電力演算
OXYGEN 8.1では、Linuxディストリビューション上での電力解析向けに、新しいリアルタイムオプションが導入されました。
Power Groupツールに追加された新しいReal-timeタブにより、算出された電力値をUDP経由で高速出力できます。更新レートは最大1 kHz、標準I/O遅延はわずか2 ms(最大4 ms)です。
リアルタイム電力演算は、標準のPower Calculationとは独立して動作します。
配線タイプは「Other」を除くすべてに対応し、以下のような代表的な電力チャネルを提供します。
- 電圧:RMS、ピークツーピーク、平均値
- 電流:RMS、ピークツーピーク、平均値
- 有効電力P、無効電力Q、皮相電力S、力率PF
- 入力チャネルの波形データ
Power Group内で定義されている場合、以下の追加チャネルも利用できます。
- DC電力値
- 機械的電力値
- 効率値
リアルタイム電力演算の設定
リアルタイム電力演算を設定するには、以下の手順を行います。
- DAQ Hardware設定でリアルタイム演算を有効にします。
- Advanced Power Group設定でReal-time Powerを有効にします。
- UDP出力を有効にし、IPアドレス、ポート、フォーマットを定義したうえで、必要なチャネルを選択します。
この手順により、データの転送先を定義します。IPアドレス127.0.0.1を使用することで、OXYGEN Ethernet Receiverへのループバックも可能です。なお、UDPパケット全体の記述はXMLファイルとしてエクスポートできます。

図1:リアルタイム電力演算の設定
Note:
ソフトウェアオプション OXY-OPT-POWER-RT が必要です。
OPC UA対応
本リリースのもう一つの注目機能は、Open Platform Communications Unified Architecture (OPC-UA) への対応です。OPC UAは、信頼性の高いデータ交換を実現する、標準化されたプラットフォーム非依存の通信プロトコルです。
OPC UAは、暗号化と署名、認証および認可の仕組みにより高いセキュリティを確保し、Windows、Linux、Androidシステム上でシームレスに動作します。
OXYGENは、以下の2つの通信モデルに対応しています。
- OPC UAサーバ(Publish)
- OPC UAクライアント(Subscribe)
OPC UAサーバ(Publish)
OXYGEN計測ソフトウェア内で、OPC UAサーバを直接作成・実行できます。
設定項目には以下が含まれます。
- ポート番号
- OPC UAクライアントからアクセス可能なチャネルの選択
- 更新レート
- 統計出力モード:最終値、最小値、最大値、平均値、RMS
これにより、測定データを外部のOPC UAシステムへ効率的に提供できます。
Note:
ソフトウェアオプション OXY-OPT-OPC-UA-SERVERが必要です。

図2:OPC UAサーバ(Publish)
OPC UAクライアント(Subscribe)
チャネルリストにOPC UAクライアントを追加することで、外部OPC UAデータストリームをOXYGENへ直接統合できます。
新しい接続を設定することも、既存のエンドポイントを読み込むことも可能です。
主な機能は以下のとおりです。
- 時刻ソースの選択(クライアント時刻またはサーバ時刻)
- パブリッシュ間隔の設定
- サーバステータス監視
- エンドポイント設定の保存およびエクスポート(CSV)
受信するチャネルやデータは柔軟に選択できます。
これには、測定値、サンプリングレート、スケーリングパラメータ、追加メタデータが含まれます。
インポートされた各チャネルには、元のプロパティに関する詳細情報が保持され、サンプリング間隔やスケーリングを個別に調整できます。
セキュアな環境での運用に向けて、セキュリティおよび認証に関する高度なエンドポイント設定にも対応しています。
OPC UAのセキュリティポリシーを設定し、暗号化・署名付き通信のための証明書や秘密鍵を管理できます。また、ユーザー認証情報(ユーザー名とパスワード)も使用できます。
これにより、セキュアなOPC UA環境へ容易に統合でき、最新のITセキュリティ要件にも対応できます。

図3:OPC UAクライアント(Subscribe)
Modbusサーバ
OXYGEN 8.1では、Modbus通信を拡張し、Modbusサーバ機能を導入しました。
従来バージョンではModbusクライアント動作のみをサポートしていましたが、本バージョンではOXYGEN内でModbusサーバを直接作成・実行できるようになりました。これにより、外部Modbusクライアントとのシームレスなデータ共有が可能になります。
統合されたModbusサーバでは、以下の柔軟な設定オプションを利用できます。
- IPアドレスおよびポートの定義
- 統計モードの選択:最終値または平均値
- 同期および非同期のスカラーチャネルに対応
- 選択可能な幅広いデータ型:float、double、int16、int32、uint16、uint32
- 最大100 Hzのポーリングレート
- Unit Identifierのオプション対応
- 値調整のためのオプションスケーリング(係数およびオフセット)
統合を容易にするため、設定はModbusクライアントシステムで使用できるXMLファイルとしてエクスポートできます。
Note:
ソフトウェアオプション OXY-OPT-MODBUS-SERVER が必要です。

図4:Modbusサーバ
位相同期統計
OXYGEN 8.1では、統計チャネルの機能を拡張し、新しい計算タイプPhase-lockedを追加しました。
この機能により、定義した信号周期数に基づいて統計値を計算できます。周期信号に対して、より意味のある解析結果を得ることができます。
主な設定項目は以下のとおりです。
- 周期ソースチャネルの選択:
デフォルトでは統計入力チャネルと同一ですが、別のチャネルに割り当て直すことも可能です。 - 解析に使用する周期数の定義:
1~1000周期の範囲で設定できます。 - 信頼性の高い周期検出のためのトリガー設定
標準の統計量に加え、Phase-locked Statisticsでは以下の2つの新しい統計値も追加されます。
- Frequency:解析対象周期の周波数
- Period time:1周期の時間
これらの機能強化により、周期信号の解析が改善され、より安定した、意味のある、アプリケーションに即した結果を得られます。
DEWE3-OPT-DIOのデジタル出力拡張
本リリースでは、Chassis Controller上のDEWE3-OPT-DIOオプションにおけるデジタル出力機能を強化しました。
これにより、同期、トリガー、信号分配における柔軟性が向上します。
標準のDigital Outモードに加え、Digital Outputチャネルは以下の信号タイプをサポートするようになりました。
- FrequencyClock:1 Hz~10 MHzの連続クロック信号
- PPS(Pulse Per Second):1秒に1回のパルス
- CLK10:専用の10 MHz連続クロック信号
- IRIG:同期出力として使用する場合のIRIG-B信号のパススルー

図5:DEWE3-OPT-DIOのデジタル出力拡張
さらに、AUX出力ピンがソフトウェアチャネルとして利用可能になりました。
この仮想チャネルは、物理的なSynchronization Output Connector「AUX」を表し、PPS、FrequencyClock、IRIGといった同じ動作モードへアクセスできます。
このソフトウェアチャネルに適用した変更は、SYNC Out設定へ直接反映されます。
さらに、CustomSignalOutモードにより、AUXコネクタで設定された同期信号を転送できます。
これにより、Sync Out信号をチャネルとして直接監視し、その信号をChassis Controller上の他のDigital Outputチャネルへ分配できます。
Notes:
TRION-APIおよびファームウェアのアップデートが必要です。
OXYGENのアップデートのみでは使用できません。
ソフトウェアオプション DEWE3-OPT-DIO が必要です。
操作性の改善と調整
主要機能の強化に加え、OXYGEN 8.1では、操作性とシステムの柔軟性をさらに向上させるため、複数の小規模な改善が導入されています。
CAN-OUT — スキップされた出力チャネルの平均化
CAN送信設定に、新しいOutput Modeオプションが追加されました。
Average(デフォルト)に設定した場合、定義した出力周期内のすべてのサンプルに対して、ブロック単位の線形平均が計算され、出力されます。
一方、Last_Valueを選択すると、従来と同じ動作に戻り、最後の有効サンプルのみが送信されます。
リゾルバプラグイン — 平滑化された速度出力
信号品質を向上させるため、リゾルバプラグインに、フィルタ長を定義可能なランニング統計フィルタが追加されました。
フィルタ長は1~1000 msの範囲で設定できます。
これにより、速度出力信号を平滑化でき、より安定した信頼性の高い測定が可能になります。
お気に入り登録した演算機能へのクイックアクセス
Add Channelメニューでお気に入りに設定した演算機能のうち、最初の4つがチャネルリスト下部に直接表示されるようになりました。
これにより、従来のPower Groupボタンに代わり、よく使う演算機能へよりすばやくアクセスできます。

図6:お気に入り登録した演算機能へのクイックアクセス
レコーダ系計測器における時刻フォーマット情報
Chart Recorder、Recorder、Scopeなどのレコーダ系計測器で、時刻フォーマット情報(絶対時刻および相対時刻)を表示できるようになりました。
これにより、データ解析やレビュー時の視認性が向上します。

図7:レコーダ系計測器における時刻フォーマット情報
XCP — 画面ロック動作
有効なXCP接続が確立されている場合、画面ロックが自動的に無効化されるようになりました。
SCPI — 並列接続
OXYGEN 8.1では、1つのホストに対して複数のSCPI接続を並列に確立できるようになりました。
これにより、OXYGEN-GO などのツールとSCPIベースのリモートシステムを同時に使用でき、より柔軟で高度な試験セットアップを構築できます。
OXYGEN SDK — Python対応
上記のOXYGEN機能アップデートに加え、OXYGEN-SDK (ODK)ではPython対応が導入され、大幅に拡張されました。
これにより、C++ベースのODKと同様に、Pythonでカスタムソフトウェアチャネルを開発できます。
この追加により、Add Channelダイアログ内で新しいチャネルタイプを直接登録したり、カスタムプロパティを持つ出力チャネルを作成したりできます。
また、QMLを使用して、Add ChannelページおよびChannel Detailsページの両方を完全にカスタマイズできます。
ローカライズにも対応しており、プロパティ名やユーザーインターフェースのテキストを翻訳できます。
技術的には、PythonプラグインはOXYGENの安定性を確保するため、専用の独立したプロセスで実行されます。
Pythonプラグインは、OXYGENから自動的に起動することも、デバッガ内で手動実行することも可能です。これにより、開発およびテストのワークフローが簡素化されます。
実装では、Python 3.12~3.15およびNumPy 2.xをサポートしており、最新の科学技術計算スタックを利用できます。
詳細および実用的なサンプルについては、GitHubリポジトリを参照してください。
Note:
Pythonは柔軟性が高く、開発しやすい一方で、同等のC++プラグインと比較するとパフォーマンスは低くなります。
これは、Pythonインタープリタ、マルチスレッドの制限、追加のデータ転送オーバーヘッドによるものです。