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ソフトウェア情報
2026年9月8日

OXYGEN 8.2 — 産業用通信機能とリアルタイム性能をさらに強化

OXYGEN 8.2では、OXYGEN 8.xシリーズで導入された機能をさらに拡張し、リアルタイムデータ交換、産業用通信、およびシステムの操作性を強化しました。

本アップデートでは、Real-Time Power AnalyzerにEtherCAT通信を追加したほか、PROFINETとのネイティブ接続に対応し、高速アプリケーション向けにXCP通信性能を向上させています。また、日常的な計測業務の効率化につながる数多くのワークフロー改善も実施しました。

これらの機能強化により、OXYGENを最新の自動化環境へより容易に統合できるようになり、リアルタイムアプリケーションへの対応力を高めるとともに、日々の計測作業をさらに効率化します。

 

新機能

 

Real-Time Power Analyzerの機能強化

OXYGEN 8.1では、Linuxベースのシステム向けにReal-Time Power Calculation機能を導入し、UDP経由でデータを出力する低遅延の電力解析を実現しました。
OXYGEN 8.2では、この機能をさらに拡張し、新たにEtherCATをリアルタイム通信インターフェースとして追加しました。これにより、EtherCATベースの制御・自動化システムへシームレスに統合できるようになりました。

EtherCATは既存のUDPインターフェースと同等の高いパフォーマンスを提供し、最大1 kS/sの出力レートと、標準2 ms(最大4 ms)のI/O遅延を実現します。
また、OXYGENのデータをEtherCAT MainDeviceへ容易に統合できるよう、設定に必要なESIファイルをエクスポートすることも可能です。
さらに、UDPとEtherCATによるデータ伝送を同時に利用できるため、リアルタイム計測データを複数のシステムへ並行して配信できます。

Note: 本機能の利用には、Ubuntu 24.04およびTRION-EtherCAT-1-SLAVEモジュールが必要です。

さらにOXYGEN 8.2では、低遅延出力機能を補助チャネル(AUX Channels)にも拡張しました。AUX Channelsセクションでは、任意のTRION(3)アナログ入力チャネルをリアルタイム出力に割り当てることができ、最大1 kS/sの更新レートに対応しています。

利用可能な出力モードは以下のとおりです。

  • Average – 設定したサイクルレートに基づくブロック平均値
  • RMS – 設定したサイクルレートに基づく実効値(RMS)
  • Last Value – 最後に取得したサンプル値

これらの補助チャネル出力は、UDPとEtherCATの両方で利用できます。これにより、電力演算結果に加えて、その他のアナログ計測データもあわせてリアルタイムに送信することが可能です。

Note: Real-Time Power Analyzerのすべての拡張機能は、ソフトウェアオプション OXY-OPT-POWER-RT に含まれています。

図1: Real-Time Power CalculationのEtherCAT出力および補助チャネル

 

PROFINETとのネイティブ接続に対応

OXYGEN 8.2では、産業用オートメーションおよび制御分野で広く利用されている産業用イーサネット規格「PROFINET」を介した計測データの送信に対応しました。
PROFINET環境では、DEWE3シャーシがPROFINET IO Device(Producer)として動作し、計測データを外部のPROFINET IO Controller(Consumer)へ転送します。本機能では最大100チャネルのデータ伝送に対応し、最大500 S/sの出力レートと標準200 msのI/O遅延を実現しています。また、同期スカラーチャネルと非同期スカラーチャネルの両方をサポートしており、送信される各測定値には最新サンプルに加え、相対タイムスタンプが付与されます。

PROFINETの設定は、OXYGENのServerメニューから行います。ここではデータ送信の有効化や各種設定を実施できます。

利用可能な設定項目は以下のとおりです。

  • 更新レート(Update rate): 2 ~ 128 ms (2 ms × 2ⁿの固定ステップ)
  • チャネル選択(Channel selection): PROFINET経由で送信するチャネルを指定
  • GSDMLエクスポート(GSDML export): PROFINETエンジニアリング環境への統合に必要なデバイス記述ファイルを生成
  • TAGファイルエクスポート(TAG file export): コントローラ側の設定を容易にする補助ファイルを生成。一般用途向けのCSV形式およびTIA Portalへ直接インポート可能なXML形式に対応

また、導入時の立ち上げ作業や診断を支援するため、OXYGENではApplication、Bus、Errorの各ステータス情報を表示します。これらの状態は、Refreshボタンを使用していつでも更新できます。

図2: OXYGENにおけるPROFINETデータ出力設定画面
① 設定オプション、ステータス情報、各種エクスポートボタン
② チャネル選択

現在、PROFINET機能はWindows 10またはWindows 11を搭載したすべてのDEWE3シャーシで利用可能です。本機能を使用するには、TRION-PROFINET-IO-DEVICEモジュールが必要です。

図3: TRION-PROFINET-IO-DEVICE

 

XCP Packed Modeに対応

本リリースでは、OXYGENのXCP機能を拡張し、高速サンプリング時の安定したデータ転送を実現する新しい伝送モード「Packed Mode」を追加しました。

Packed Modeでは、各サンプルを個別に送信するのではなく、複数のサンプルを1つのイーサネットフレーム(最大1,400バイト)にまとめて送信します。これにより、ネットワーク帯域を効率的に利用し、最大2 MS/sの高いサンプリングレートでも信頼性の高いデータ転送を実現します。

Packed Modeを有効にするには、XCPプロトコルバージョン1.4を選択し、1つのイーサネットフレームに含めるサンプル数を定義する「Maximum Packed Count」を設定します。最適な値は、送信チャネル数とデータ形式に基づいて算出します。

例: 16チャネルでfloat型(1値あたり4バイト)を使用する場合

1400 bytes ÷ (16 channels × 4 bytes) = 21.875 Maximum Packed Count = 21

Packed Modeは、100 kS/s~2 MS/sのサンプリングレートでの利用に適しています。一方、100 kS/s未満の低速なデータ転送では、従来のXCP 1.0プロトコルの利用を推奨します。

図4: XCP Packed Modeの設定画面

 

Control Instrumentの機能強化

Control Instrumentを強化し、チャネル操作の柔軟性と利便性を向上させました。

個々のチャネルをControl Instrumentへ直接割り当て、個別または複数チャネルを同時に制御できるようになりました。チャネルを割り当てない場合は従来どおり動作し、計測設定内のすべての対応チャネルに対して選択した操作が適用されます。

また、新たに以下の3種類のコントロール機能を追加しました。

  • ① Digital Out State – デジタル出力モードおよびその設定を、計測画面から直接変更できます。記録中でも設定変更が可能です。
  • ② Zero – Zero機能へ直接アクセスできるようになり、チャネル設定を開くことなくソフトウェアベースのオフセット補正を実行できます。
  • ③ Lead Wire Compensation – 計測画面から直接リード線補償を実行できます。本機能は、3線式クォータブリッジチャネルを使用するTRION(3)-18xx-MULTIモジュールで利用できます。

図5: Control Instrumentの新しいコントロール機能

 

Meter Instrumentの機能強化

Meter Instrumentに2つの機能強化を追加し、計測値やステータス情報をより柔軟に可視化できるようになりました。
1つ目は、ユーザー定義の複数リミット値に対応したことです。従来の1組の上限値・下限値に代わり、複数の上限値および下限値を設定できるようになりました。

この機能は以下のMeter Instrumentで利用できます。

  • Digital Meter
  • Analog Meter
  • Bar Meter
  • Indicator

さらに、Indicator Instrumentでは従来の色による状態表示に加え、画像、絵文字、カスタムテキストによる表示にも対応しました。

これにより、計測値やシステム状態をひと目で把握できる、より直感的なダッシュボードを構築できます。

 

図6: Meter Instrumentのリミット設定を強化

 

CANビットオーダー反転機能を追加

OXYGEN 8.2では、Intel形式およびMotorola形式のCAN信号に対して、ビットオーダーを反転できる高度な設定オプションを追加しました(図7)。
この機能は、独自仕様や非標準的なCAN実装を採用しているアプリケーションに対応するためのものです。

ビットオーダー反転は、公式なVector DBC規格には含まれていないため、該当する設定を.dbcファイルに保存することはできません。そのため、本機能は現在、CANメッセージの受信時のみ利用可能です。
また、意図しない設定変更や信号解釈の誤りを防ぐため、この機能は初期状態では無効になっています。利用する場合は、Advanced Settings内のAllow advanced CAN optionsを有効にした後、CANメッセージ設定でInvert bitsを有効にしてください。

 

図 7: 標準ビットオーダーおよび反転ビットオーダーのCAN信号を受信するためのCANメッセージ設定

 

ロギング機能の改善

デバッグや長期間のシステム監視において、より柔軟にログを管理できるよう、OXYGENで2種類のログファイル書き込みモードをサポートしました。

従来のセッション開始時にログファイルを上書きする方式に加え、既存のログファイルへ新しいログエントリを追記できるようになりました。なお、デフォルト設定では、これまでどおり新しいセッション開始時にログファイルが上書きされます。

Note: アプリケーションが予期せず終了した場合、OXYGENは関連する診断情報を保持するため、専用のクラッシュログファイルを自動的に生成します。

ログの動作は、OXYGEN Setup → Advanced Settings → Log File Settings から設定できます。
利用可能な設定項目は以下のとおりです。

  • Write Mode – ログファイルの保存方法を選択します。-「Overwrite」:既存のログファイルを上書き
    「Append」:既存のログファイルへ追記
  • Maximum Log File Size – ログファイルの最大サイズを設定します。設定したサイズに達すると、ログファイルは自動的に上書きされます。「0」を設定した場合は、ファイルサイズの制限が無効になります。

 

まとめ

OXYGEN 8.2では、計測技術と最新の自動化・制御システムとの連携をさらに強化しました。EtherCAT、PROFINET、およびXCP Packed Modeへの新たな対応により、より高速かつ効率的なデータ交換を実現するとともに、各種ワークフローの改善によって日常の計測業務をよりスムーズに行えるようになりました。

リアルタイム電力解析、産業用通信、高速データ収集、そして直感的なシステム操作まで、OXYGEN 8.2はエンジニアの試験・評価環境をより高度に、より効率的に構築することを支援します。

自動化システム、電力解析、バリデーション、制御アプリケーションなど、さまざまな用途において、OXYGEN 8.2は計測データの取得・解析・共有を支える強力なプラットフォームとして、高い信頼性と柔軟性を提供します。